桝郷春美のブログ

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フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

ニュータウンの一時的な風景

山と町の境界にたたずむ。

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コンクリートで固めた重さ約2トンのオンバシラ。並々ならぬ思いを持って企てた人たちがいて、地域の人たちと共に作り、坂道を上がって、100人がかりでこの場所に運んできたと聞いた。えらいこっちゃ。


オンバシラに刻まれた詩によれば、時間には重さがあるんやって。ほんまに?
「時間は重いよ、重くなってくる」ってすかさず教えてくれた6歳児。「数字が重いよ」

ほー。
皆で一緒に声に出して数えてみる。ほんまや、重くなってきた。
「でもな、一、十、百、千って、飛ばして数えたら重くないんやで」
そっかー。


元々、山だったところを開発で切り開いて作られたニュータウン。山はずっと太古から変わらずにそこにある。町は...


思春期をそこで過ごした人によれば、30年ほど経っても、あまり変わっていないらしい。会社勤めのお父さんが当時、朝から深夜まで毎日仕事漬けで、時間って何やろ、と子どもながらに思っていた、という話を聞かせてくれた。


オンバシラを傍に、山々に囲まれた町を一望していると、このオンバシラが、橋のように見えてくる。
山と町をつなぐ橋。
山に漂う時間は、何にも急かされることなく、傍にいる人たちと自然に語らいが生まれて、とても心地のいいものだった。


再び、町に下りた時、空間が変わってさみしさを覚えた。それは、山からの視界は、町も山も空も広々としていたのが、町には目線の高さに家や車や電柱や、さまざまな物が現れて、見通せなくなった息苦しさなのかもしれない。下りた時の実感を、6歳児はこう話した。「高いものに挟まれて、先生に怒られたみたいな感じがした」


山からの景色は、「スッキリした。今はそれだけしか言えんなっ!」やって。
せやな。それだけで十分伝わったわ!


再び町を歩く中、公園を見つけると、ジャングルジムの遊びに誘ってくれた。「ここに上るとな、ワシは宇宙みたいって思う」
へー、そうなん?
同じ高さに上ってみて、その子が言ってる感覚が分かった。ジャングルジムのてっぺん、下から数えて6段め。地面から足が離れて、下をみると浮遊しているみたい。


足元に広がっている宇宙の存在に気づかせてくれた。今日が初対面だった6歳児に、町歩きの面白さを教えてもらった秋の一日。