桝郷春美のブログ

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フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

お店が生命線

このところ、なじみのジャズ喫茶に通う頻度がかなり増えている。諸事情により、今の私には生命線。
マスターの選曲、鼻歌、音の響き、ミチヨさんのおいしいご飯やスイーツ、ピアニストのおじさまによるリズムと息のレッスン、まるで風呂に浸かるような裸の心の交流、コーヒーの香り。それらすべてが骨身に沁みる。
今日はフランスから来た方と相席。互いの共通言語である英語で語らいまくった。言葉を超えて、フィーリングで分かり合えていると感じる瞬間が何度もあった。なぜって? お互い繊細な者同士だから。そして、このお店が好きで通っている者同士だから。彼女は言った。
「人と信頼関係をつくるには、相手を気にかけて、深く聞くことだと思う。それはね、誰とでもできるわけではない。日本に来て京都ライフは楽しいけど、窮屈に感じることもやっぱりある。外見や体型とかで異質な目で見られることも多いから。だけど、このお店ではタトゥーも見せられるし、私のままでいられる。お客さんだって誰も私の外見を気にしないし、お互いにそう。いろんな人がそれぞれに、ただそのまんまいる。それが居心地いいし、そうできる場所はそうない。だから私はここが好き」
わかるなあ。
私は、このお店に出会って2年が過ぎた。突然住まいの窮地に追い込まれた私に、出会って間もないのに手を差し伸べてくれたお店。今、一人では生きていけないと切実に感じる状況が続いていて、このお店が私の人生になくてはならない、かけがえない場所になっている。
いつかは私自身がそんなお店のような存在になれたらいいな。そのためにも今必要なのは、いくらしんどくなってきても、内にこもらないように気をつけること。ジャズ喫茶が、ジャズの音楽が、ここで出会う人たちが、それを食い止めてくれている。
マスターはよく言う。
「力を抜いて」「空っぽになって」
それは簡単じゃないよなあ、とつくづく思う。
せやけど、やっぱり、そっちの方向がいい。
希望は光だけでなくていい。真夜中の自転車乗りで、マスターには暗闇の面白さを教えてもらった。音の冴えわたりや、黒のグラデーションの美しさを私は身体で知っている。今こそ、思い出そう。