桝郷春美のブログ

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フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

自転車 Season 1 - 葉月

再び、滋賀で夜中のサイクリング。
なじみのジャズ喫茶のマスターが、満月の夜に自転車で走りに行くのに、仲間の方々とご一緒させてもらった。

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ジャズ喫茶の道、50年以上。
自転車の道、40年以上。
どちらもマスターであり、それは相互関係にある。ジャズレコードと自然の音、ともに「耳を大きくして」感覚を研ぎ澄ませて聴いている。


当初、夜中のサイクリングは、走って迷って行き止まりになって、また走って、の繰り返し。そうして道を探すのがジャズっぽいのだという。自然に溶け込み、気持ちよく走れる道を追求してきた。マスターにしか行けない道。だから「俺の道」と呼ぶ。そうして見い出したルートを案内してもらった。

 

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このたびは、夜の神社へ。代表的な大社をはじめ、その地域でしか知られていないような鎮守の杜にも入った。とても一人では行けない場所。先の見えない暗闇に怯むも、その先に広い境内が現れたときは開放感で胸がスッとした。


マスターに聞いてみた。暗闇は怖くないのか、と。暗闇では敢えて凝視する。すると怖くないのだと。そうして、あらゆる黒のグラデーションを見い出し、30、40も見分けられるのだとか。

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それにしても、夜風が気持ちいい。田んぼ道に入ると、匂いも移り変わる。稲のほの甘さ、焼畑の土の香ばしさ、草の青臭さ、花の芳香。新鮮な空気を思いっきり吸い込むと、脳までスッキリする。普段の生活でマスクを着け、鼻も口も閉ざされた状態でいるから、なおさらだ。塞いでいた感覚が開いていく。体が大切なものを思い出して喜んでいる。


日付が変わり、ちょうど満月となった。月の周りに、小さなうろこ雲が付き人のように寄り添っている。月と雲が重なる境界に、ほんのり赤い光の半円が輪郭となって現れて、上品な輝きを放つ。そんなお月さんの下で月光浴しながら、走り抜けた。


約5時間の真夜中のサイクリング。日常に戻っても、あの体験が非日常には思えない。私の中で、何かが微妙に変わってきている。日常と非日常が切り離されずに、自分の一部としてつながっている。


日常も非日常も、人の視点からの捉え方。月の動きも、自然も、ただそこにある。そうして視界を広げると、わたしの枠が外れて、だんだん原形に戻っていくような感じがする。

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