桝郷春美のブログ

harumiday_桝郷春美のブログ

フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

水上勉さんと乾千恵さん

故郷の隣町出身の作家、水上勉さんのことが気になり、作品を少しずつ読んでいる。ここ8年ぐらい、ずっと思い巡らせていることがある。それで、水上さんの作品を読んでいけば、もしかして何かつかめるかもしれないと思って読み始めると、行間から立ちのぼる生の色気のようなものに、むしろ引き付けられている。


帰省時に、水上さんが建てた若州一滴文庫(福井県おおい町)に行ってきた。併設されている車椅子劇場の舞台に差し込む新緑の光がきれいだった。

f:id:harumasu:20210321020857j:plain



京都に戻り、しんらん交流館で開催中の水上さんの生誕100年記念の展覧会に足を運んだ。そこで、水上さんと30年来交流があるという乾千恵さんという方に出会った。劇場の写真を見せると「なつかしい」と一言。会場には、水上作品と併せて、乾さんの書もあった。竹素材を使って水上さんが自ら漉いた和紙に、乾さんによる「音」の文字が楽しそうに乗っていた。そこに何を書けばよいか、紙が教えてくれるのだという。

f:id:harumasu:20210321020941j:plain

創作活動について乾さんは、「気がすんでいれば、うまくいく」と言っていた。気が済むって、気が澄むということなのかなと気付いて、はっとした。

水上勉さんは、故郷のおおい町について「心の根がつながっている場所」と言っていたという(学芸員さん談)。心の根、かあ…。


逡巡していることに対して、自分なりの解を見つけ出すのには、まだまだ時間がかかりそうだけど、水上さんの作品や展示を巡って、たくさん寄り道していくと面白そうだ。今日の乾さんとの出会いで、そう感じた。