桝郷春美のブログ

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フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

「愛しのクマちゃん」


「愛しのクマちゃん」(作・演出 小栗一紅)という朗読劇を大阪のウィングフィールドで観た。

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劇作家の大竹野正典さん亡き後の、大竹野さんに近しい人々の歩みを描いた作品。
つい笑ってしまうエピソードの数々と、死に向き合うことの重石と、しっかり悲しんで、また立ち上がるところまでたどり着いた作者の心の歩みと、故人の作品を「遺す」取り組みのかけがえのなさと。直接は知らない、一観客の私が短い言葉で伝えられるわけもないのに、それでも、何か言葉で記しておきたいと手が動く。


なんだろな、このはやるものは。想いのある人たちがこんなに集って一つの作品を共に作り上げていることの、ほっかほかの熱気に満ちた場に立ち合ったからだ。近しい人を失うことの喪失感が、他界後10年という年月を経て、それぞれの慕う気持ちで大きく包まれていた。観劇中、亡くなった人と生きている人をつなぐ、ゆらぎの中にいるような感覚があった。ゆらぎの中でこそ見える道、それが「遺す」という取り組みなのだろう。


大竹野さんは、知る人ぞ知る大阪の劇作家。2009年海の事故で急逝。ご本人が亡くなった後、妻で俳優の後藤小寿枝さんを始めとする有志の人たちが、大竹野さんの作品を知ってほしいと地道に活動してこられた。追悼公演等で作品に出会って魅了され、上演する劇団や団体が徐々に増えていった。


2019 年、没後10 年記念公演(ぼつじゅう)として、 26 の劇団・団体により大竹野さんの台本を上演する連続公演が大阪と東京で行われており、来夏の命日 7 月 19 日まで続く。(詳細はこちら→大竹野正典没後10年記念公演
「愛しのクマちゃん」は、ぼつじゅう記念公演の一環で、大竹野さんのことを描いた書き下ろし作品。初演は今日10日で終わった。またいつか出会いたい。桜の花の咲くころに。

 

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