桝郷春美のブログ

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フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

ウラジオストク 最終日ーー北朝鮮料理店へ

お昼に北朝鮮料理店に行った。ウラジオストクには北朝鮮から働きに来ている人たちや一部留学生がいるようで、レストランがいくつかある。そのうち、日本語のメニューがあるというレストランに足を運んだ。そこは、ウラジオストク駅からバスに乗って南へ10分ぐらい走ったところ、ホテルの隣にあった。

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店内に入ると、綺麗なお姉さんたちが迎え入れてくれた。どこから来たのか聞かれて、Japanと答えると日本語が併記されているメニューを渡してくれた。他に、ロシア語と中国語が載っていた。内容はほとんど日本で出会う韓国料理と変わらない。ナマコ料理などご当地ものもあったけど、定番のビビンバやチゲ、キンパ(海苔巻き)を注文した。
前菜のナムルを含めて、全体的に甘めの味付けだった。北朝鮮がそうなのか、これはウラジオストク仕様に味付けされたものなのかは分からない。普通に美味しかった。テーブルも清潔で、それまでに市内で行った、どのレストランよりも小綺麗だった。
若いお兄さんが料理を持ってきてくれた。料理の写真を撮ってもいいかと尋ねるとOKとのこと。店内の写真を撮った韓国人の観光客らしき人は、即座に止められて、その場でデータを消していた。
お店のお姉さんたちは、物腰柔らかい対応だったけれど、目を合わせることはなかった。旅の友の一人は、覇気がないという意味でお人形さんみたいという印象を抱いていた。


お客さんが帰って、店内が落ち着いたひととき、厨房の方から歌声が聞こえてきた。女性が何人かで歌っている様子だ。

 

高音の澄んだ声。きれいだな。
さっきのお兄さんの笑い声も続いた。
誰かに歌わされるわけではなく、仕事仲間と楽しんで会話している中で、歌になった。そんな雰囲気だった。


その歌声は束の間で止んだ。
その後、じんわりと涙が込み上げて来そうになった。
歌っていいな。
食っていいな。
直に触れることができない大事なものがあって、その存在を示してくれるドアみたいな役割だと感じた。


ここはガイドブックに載っていないお店で、今後、ウラジオストクに観光に来る人に勧められるかどうかは分からない。北を出て、異国で働く人たちの、声の素顔に出会えたことは嬉しかった。

 

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