桝郷春美のブログ

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フリーランスのライターです。執筆記事や日記など。

声をかけるのを躊躇しない

一昨日、自転車で街中を走っていたら、バングラデシュ人のご家族が道ばたでしゃがんでいるのが見えた。


一旦は通り過ぎたものの何となく気になって振り向くと、お父さんらしき人が辺りをきょろきょろしていて、近隣の人たちが遠巻きに見ているものの誰も近寄らない。


戻ってみると、お父さんが赤ちゃんを抱いている姿が見えた。どうしたのかと話しかけてみた。すると、赤ちゃんがてんかんを起こしているから病院に行きたい。タクシーの運転手さんは英語が通じなくて、ご家族で誰も日本語が分かる人がいなくて行きたい病院とは別の病院に連れてこられた。以前に診てもらった病院なら記録があるからそこに行きたい。救急車を呼びたいとのこと。


ただごとでない事態を察して、代わりに救急に電話した。到着後、救命士さんから症状を質問するのに通訳を頼まれ、私も車内に入った。生後3カ月の赤ちゃんを巡って必死で通訳した。病院の受け入れが決まり、赤ちゃんは運ばれた。私は救急車から降りて見送った。


赤ちゃんのニックネームは、さくらちゃん。バングラデシュの本名は別にある。だけど、お母さんがそう呼びかけていた。

 

さくら。
2月末、日本で生まれ、この渦中に育っている女の子。コロナとは別の理由で否応なく病院に行かなくてはいけない。日本語がわからないご家族が、京都に暮らしている、この時期に。


私はただの通りすがりなので、背景はわからない。
ご家族は、日本語がわからないけれど、さくらという日本のニックネームをつけた。そのことがとても印象に残った。


いろいろ気になるし、思い出すと今でも心がざわざわするのだけれど、とにかく、さくらちゃんの無事を祈っていようと思う。そして、言葉は無力じゃないと実感した。個であっても微力にはなれる。これから、道ばたで困っている人がいたら、声をかけるのを躊躇しないでおこうと思う。

 

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