生魚のにおい漂う、夜の卸売市場。こんな機会でもなければ、来ることは無かったであろう場所。ステージトレーラーで巡る野外劇『日輪の翼』(原作 中上健次、演出 やなぎみわ)。かつて熊野にあった〈路地〉の世界が、今回は神戸最古の港、兵庫津に現れた。
それぞれの上演地の、土地の記憶と呼応して立ち上がる作品。この港は、一遍上人が入滅されたところだそう。踊り念仏が作品に織り交ぜられ、天と地、陸と海、聖と俗、この世とあの世を“縫い合わせる”ような力をビシバシと感じた。
最後の意表をつく演出に、歓声が上がった。普段は見えにくい世界の重層を、存分に見せてもらった。